明け方あなたが凍えぬように
膝を突いた場所からぎし、と軋んだ音がする。
ベッドの上、息つく暇もないほど口づけを繰り返しながら、ケイの手が首の後ろで動く。
結んでいたタイがほどけて、ケイの手首にまとわりついた。
「……ん」
跨がった体の下で、ケイが眉をしかめて身じろぎした。タイが邪魔なんだろう。
手首を取って、タイをつまみ上げる。その時に、太い脈がとくん、と指の腹の下でかすかに動いた。
ああ。齧りたい。齧って、思うがまま啜ってしまいたい。
けれどもそうしたらケイは干からびてしまうだろう。それは、困る。
この味の血が吸えないことなんて、もう考えられなかった。
もしケイがいなくなっても、運が良ければ相性のいい人間が現れるだろう。
でも、違う。そうじゃない。俺はもう、ケイの血しか、吸いたくない。
手首に牙を立てたくなる本能を抑えながら、そっとそこに唇を押し付ける。味見代わりに舌で少し舐めてしまった俺を見て、ケイがふ、と笑った。
「おいで」
あぁ、今のが彼のお気に召したのかな。よく分からない。けれども、触られるのは、気持ちがいい。
腕を引かれる。体が重なって、けれども溶けてどろどろになんてならなくて。
そのまま。俺もケイも、そのまま。ただ、二人だけのなにかを共有する。
そうして朝を迎えるのは、嫌いじゃない。